相続人全員が相続放棄
こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!⇩
2023年 相続放棄が変わる?
相続が発生したとき、法定相続人は負の遺産(借金)も引き継ぎます。近い親族であるとはいえ、自分で作った借金を負うのはつらいことです。
相続財産がプラスよりマイナスが多い時には、相続放棄をすることができます。放棄すれば、プラスの財産も取得できませんが、借金も負うことが無くなります。放棄したことで、最初から相続人ではなかったことになるのです。
【法定相続人は誰?】
相続放棄には、期間があります。
相続開始を知ってから3か月以内にしなければ相続放棄は認められません。
期間を過ぎてしまうと、原則として相続放棄ができなくなりますので、相続が発生したら財産調査を急ぎましょう。
相続放棄をすると、放棄した人は最初から相続人でなかったことになります。そのため、もともとは相続人でなかった人が繰り上がって相続人になることがあります。その場合に相続放棄をする場合には、元の相続人が相続放棄したことを知ってから3か月以内に相続放棄をしなければなりません。
例えば、父親が亡くなり母親と長男が法定相続人だった場合。
配偶者と長男が相続放棄をすると、第二順位の父母(父親の父母)が相続人になります。
被相続人の父母が既に死亡している場合は、第三順位の兄弟姉妹が相続人になります。
そして、その兄弟姉妹が相続放棄すると、法定相続人はいないことになります。
借金が多い場合には、相続したい人はいませんから、上記の様な順番で相続放棄がされて、相続人がいない状態になってしまうことが多いのです。
【相続人がいないときの手続きが変わる?】
相続人がいない相続財産は最終的に国庫に帰属することになります。
そのために必要な手続きがあるのですが、誰がそれをするのでしょうか。
現民法では、「相続の放棄をした者は、その法規によって相続人となった者が相続放棄の財産管理の管理を始めることができるまで、その財産の管理を継続しなければならない」とありますので、上の例では最後に相続登記をした兄弟姉妹が「相続財産管理人」専任の申し立てをして、相続財産管理人が精算から国庫帰属の処理をすることになります。
しかし、民法940条の改正が2023年5月施行されます。改正法では「相続の放棄をした者は、その放棄のときに相続財産に属する財産を現に占有しているときは、相続人または相続財産の清算人にて対して当該財産を引き渡すまでの間、その財産を保存しなければならない。」と変わります。
改正法によると、相続財産を占有していない相続人は、相続放棄をした後にその財産を管理・保管をする必要が無くなると読み取ることができます。実際このような取り扱いをすると、管理者のいない相続財産が発生するので様々なトラブルが発生するようにも感じます。
しかし、わざわざ条文を改正するのですから、これまでとは違う取り扱いになるのは間違いありません。
マイナス財産の相続が発生しそうな人は、注意して情報収集をしておきましょう。