こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続百ポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族の信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!⇩
令和5年税制改正 相続関連
相続が大きく変わろうとしています。
来年からは、いよいよ相続登記の義務化もはじまります。
制税も大きく変わっていくようです。特に今回は、生前贈与の課税価格への加算期間が大きく変わります。今まで以上に相続税対策を早期に始める必要が出てきました。
【相続開始前贈与の加算期間】令和6年1月1日以後の贈与に適用
相続開始前の贈与(生前贈与)があった場合の相続税の課税価格への加算期間が、7年(現状3年)になります。年間110万円の暦年贈与を使い相続税の節税をする場合、これまでは相続開始前3年以内贈与が相続税の課税価格に加算されていましたが、相続開始7年前の贈与が加算されます。ただし、贈与により取得した財産のうち、相続の開始前3年以内に贈与により取得した財産以外の財産については、100万円を控除した残額が加算されます。
例)節税対策で、子と孫5人に年間100万円の贈与を10年間していた親が亡くなった
相続税の課税価格に加算される金額
①これまで=(100万円×5人)×3年=1500万円
②改正後 =(100万円×5人)×7年-100万円=3400万円
相続税の課税価格が、1900万円増えてしまいます。
今後は、生前贈与を利用した相続税の節税対策は、早く始めなければなりません。
※例示のような贈与は、実際には定期贈与として贈与税の対象とされるリスクがあります。
改正による差を試算するための例ですので、ご容赦ください。
【相続時精算課税制度】令和6年1月1日以後の贈与に適用
①制度を利用する贈与により取得した財産に係るその年の贈与税に関して、課税価格から110万円を控除
できるようになります。また、相続発生時に相続税の課税価格に加算される価格も110万円を控除した
金額となります。
②制度を利用して取得した土地・建物が、贈与者の相続発生による相続税の申告期限までに災害によって
被害を受けた場合、災害によって被害を受けた部分に相当する額を控除した残額を課税価格に加算する。
※こちらは少し有利な内容ですがMAX110万円ですし、災害控除は適用となる可能性は相当に低いと
思われます。
【空き家に係る譲渡所得の3000万円控除の特例】
令和6年1月1日以後の譲渡に適用 令和9年まで
相続により、古い(旧耐震基準 昭和56年5月以前の建築)空き家を取得した相続人が、3年以内に新耐震基準適合工事をして、あるいは、建物を撤去して譲渡した場合に譲渡所得から最大3000万円が控除される特例です。
①今回の改正で、譲渡のときからその翌年の2月15日までに耐震工事や建物撤去がされた場合にも、
特例が適用できることになります。
※建物を耐震工事したり撤去するには費用がかかりますが、相続人が費用を負担せずに購入者が期限内に
工事をすれば特例が適用できることになります。
②空き家を取得した相続人の人数が3人以上の場合、特別控除額は2000万円となります。
相続人が3人で、1/3ずつの共有で取得した場合
・今までの最大控除額=3000万円×3人=9000万円
・改正後の最大控除額=2000万円×3人=6000万円
この特例は、空き家対策としてスタートしましたが、適用要件が厳しく、また、手続きも煩雑で利用が進んでいません。少しでも、空き家を減らすために改正となったようです。
なお、旧耐震の古い空き家を、耐震工事をして売却というのは現実的ではなく、特例を使う場合はほとんどが建物撤去となります。撤去工事は、普通の一軒家で150万円~300万円かかりますから、撤去予定の建物込みで売却して、購入した業者などに撤去工事をしてもらえるので、使いやすくなると思います。
【教育資金の一括贈与】令和5年4月1日以後に取得する信託受益権
①贈与者死亡したとき、相続財産が5億円超の場合は、受贈者が23歳未満でも残額が相続税の課税対象となる。
②受贈者が30歳になったとき、残額に対して一般税率の贈与税が適用となる。
【結婚・子育て資金の一括贈与】令和5年4月1日以後に取得する信託受益権
受贈者が50歳になったとき、残額に対して一般税率の贈与税が適用となる。
※上の二つは、課税強化です。通常、60歳以上の者が18歳以上の子や孫にする贈与に対しては、特例税率が適用となります。一括贈与の制度を使って、非課税で贈与した場合、残額に対してこれまでは特例税率であったところ、一般税率適用とすることで増税となります。
例)500万円に対する贈与税
一般税率=500万円×30%-65万円=85万円
特例税率=500万円×20%-30万円=70万円
これらが、令和5年税制改正で相続に関わる項目の大きなものになります。
特に、生前贈与に大きな影響があります。暦年贈与による節税対策はよく利用されていましたので、今後は違った対策を検討することになりそうです。