こんにちは、「相続コンサルタントしゅくわ事務所」代表の宿輪です。
弊所は、開業以来相続専門の事務所としてたくさんの相談者の方からお話を聞いてきました。相続は、すべての人が当事者となる法律行為ですが、その内容を知る人は少ないのが現実です。知らないがゆえに、相続時にトラブルとなり、最悪の場合は親族間に遺恨を残す「争族」となってしまいます。
少しの知識があれば、トラブル発生となる前に対策が可能となります。「相続ワンポイント」では、皆さんに知っていただきたい相続の知識をランダムに解説しています。100を超えるタイトルがありますので、ぜひお役に立ててください。
弊所では、民事信託(家族信託)も積極的に取り扱っています。遺言などこれまでの民法では解決できなかった問題がクリアにできます。☞に小冊子ダウンロード版を用意していますのでご利用ください。
弊所の活動内容を、スライドを使って説明してみました。☞のユーチューブ動画も見ていただけると嬉しいです。
では、ワンポイントをどうぞ!
相続させるか遺贈するか。どちらを選ぶ?
相続トラブルは、財産の分け方を相続人全員で話し合い、合意しなければならない為に発生します。
親から見ると、小さいころあんなに仲良かった兄弟が言い争うなんて考えたくありません。しかし、生活環境や経済状況も全然違う相続人で、誰もが納得する分け方を決めることは至難の業です。
遺産分割協議が原因で、親族間の関係が壊れてしまうことはよくあることです。
一番の争族予防は、財産の持ち主が遺言をすることです。相続人は、被相続人が決めた分け方で財産を取得することができます。話し合う必要が無いので、争いになりません。
今回は、遺言で財産を分けるとき「相続させる」と「遺贈する」のどちらを選ぶかを考えます。
【令和2年7月10日 遺言の保管制度が始まる】
費用が掛からず、気軽にできる「自筆証書遺言」ですが、
・素人が作るので法的不備により、無効となる。
・家庭裁判所の検認を受けなければ執行できない。
・遺言を見つけてもらえない。
・紛失してしまう。
・偽造される。
などの問題があり、せっかく作っても希望通りの遺産分割ができないことがありました。
しかし、令和2年7月10日から、自筆証書遺言の保管制度が始まります。
これを利用すると、保管時に法務局で「日付が抜けてないか?」などの簡単なチェックが入り、紛失や偽造の心配がなくなります。そして、家庭裁判所の検認も不要になりますので、格段に自筆証書遺言の安全性が向上します。
自筆証書遺言をする方は、これから増加すると考えます。
では、財産は相続させた方がいいのでしょうか、遺贈した方がいいのでしょうか。
【相続させると遺贈するの違い】
登記 | 登録免許税 | |
相続させる | 単独申請 | 0.4% |
遺贈する | 共同申請 | 2% |
※不動産を遺言した場合の比較
遺言で財産の行き先を指定する場合、「相続させる」か「遺贈する」の二つしかありません。
あげる・譲る・与える・取得させる
などの言葉を使うと、相続なのか遺贈なのかが曖昧になり、争いのもとになってしまいます。
さて、相続人に対しては、相続させることも遺贈することもできます。
相続人以外(長男の嫁など)には遺贈できますが相続させることはできません。
遺産を取得させるという効果は同じですが、相続と遺贈では考え方が違います。
相続させる➤相続発生時に、直接所有権が移動する
遺贈する➤相続発生後、相続人から受贈者に所有権を移動する。
故に、遺贈された不動産を登記する場合には、相続人全員のハンコが必要になります。
登録免許税も、相続させるが0.4%ですが、遺贈の場合は2%。
5千万円の評価額なら、相続させる=20万円 遺贈する=100万円です。結構な差があります。
(*但し、遺贈すると記入がある場合でも、相続人であることを証する戸籍謄本を添付すれば0.4%)
登録免許税はこちらで勉強しましょう➤「登録免許税を計算しよう 軽減を受けるために必要なこと」
【相続させるがいいのか】
令和2年4月から始まる「配偶者居住権」は、相続させることができません。
民法1028条により、「配偶者居住権が遺贈の目的とされたとき」に取得できることになっています。
配偶者のために新たに設定された制度なのに、なぜでしょうか?
例えば、
夫は自宅にずっと住めるようにしたいと考えた。
しかし妻は、夫が亡くなったら引っ越したいと思っていることもあります。
もし、配偶者居住権を相続させるとされていた場合、居住権だけを放棄することができません。すべてを放棄する「相続放棄」はできますが、一切の財産をもらうことができなくなってしまいます。
遺贈であれば、居住権を放棄しても、金銭などは取得して好きなところに住むことができます。
遺言されても、配偶者が居住権を取得するか否かの選択ができるようにするために、このようになっているのです。
このように、相続させるとした場合には、指定された財産を欲しくないときに、それだけを拒否することができないという側面があるのです。
(*配偶者所有権の登録免許税は0.2%となっています。)
保管制度が始まると、自筆証書遺言を作る方が増えると思いますが、円満な相続を実現するためには様々な知識が必要になります。自信が無い場合は、専門家のサポートを得た方がいいでしょう。
遺言の成否は、死亡後に分かります。失敗していてもやり直しは不可能なのです。